『ちひろさん』感想

あらすじ

あてもなく海辺の町にたどりついた、元風俗嬢のちひろ(有村架純)。ある弁当屋の味に魅せられた彼女はそこで働き始め、風俗で働いた過去を隠そうとしないあっけらかんとした性格、屈託のない笑顔、気取らないおしゃべりで人気を集める。やがて、家族や周囲との関係をうまく築けない女子高生、伝えたいことを伝えられずもどかしさを抱える少年、父親との過去に悩むあまりに暴力的な衝動に駆られそうになる青年など、生きづらさを抱えた者たちが、彼女を慕うようになっていく。

孤独は寂しいようで、しがらみのない楽な生き方のようで。
ちひろさんを見ていると、一人で気ままに自分に素直に生きる姿が心地よく感じる。
 
「人間はみんな違う星から来た宇宙人」「人の心を独り占めすることなんてできない」
全員と分かり合うことなんてできないし、相手の心を独占することなんて、できっこない。なんだか、人に対して諦めているようで、悲しいけど一理あるんだと思う。
 
でもだからと言って、分かり合う努力をすることは無駄ではないと思うし、それを諦めてしまったらいけないような気もする。人に期待しない、自分に期待しないってのは、楽に生きる手段であるとは思うけど、まだ諦めたくないなってのが私の感想です。
ちひろさんは、きっと自分にも人にも期待しない生き方を選んだ過去があるんだろう(明かされてはないけど)
孤独を感じられなくなったら、生きていくのが怖くなる。
だから彼女は、自分を孤独から抜け出してくれそうな多恵ちゃん(弁当屋の奥さん)の近くにいることをやめて、またフラッと街を移動する。
 
個人的な涙腺ポイントは、オカジがマコトの母親が作った焼きそばを食べて涙を流すシーン。
 
家族が一番。家族よりも大切なものがあるのか。
 
子供の気持ちを汲み取ろうとしない親が家族なら
味も分からなくなってしまうような食卓を囲むのが家族なら
 
「家族も他人も関係ない」
本当にこれに尽きると思う。
同じ星の人が家族だなんてことは、きっと滅多にないことなんだろう。
私もいつか、この人は同じ星の人だなって心から思えるような人に出会えるんだろうか。一生のうちにそんな人が一人でも見つけられたら、きっと幸せなんだろうな。
 
この作品が刺さらない人、ちひろさんの生き方、彼女の孤独に対する捉え方をよく分からないなって思える人は、きっと幸せな人生を歩んでるんだろうとも思う。
 
特に劇的なことも、目を奪われるようなシーンはないけれど、見た後にスッと心に沁みる作品。
 
あと風吹ジュンさんの演技は流石の一言。声で泣ける。
 
評価:★★★★☆